GEOTHERMAL
地熱


地球科学調査

地熱・温泉資源を見つけるために必要な地質調査、物理探査、地下学調査などの一連の地球化学調査を実施致します。

地質調査

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  • 地熱徴候(地表)調査
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  • 地熱概念モデル作成
  • コア・カッティングス解析
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    コアカッティング解析

    -地下の情報を読み取る-

    A model of geothermal system of the Otake-Hatchobaru geothermal area(MANABE,EJIMA,1984)

    はじめに
    地熱井の掘削(図1、2)によって採取されるコア・カッティングス(図3、4)は、地下の状況を直接伝えてくれるまさに「地下からの手紙」と言えます。
    コア・カッティングス解析を行うことにより、地熱井周辺の構成岩石や地質層序が明らかになるとともに、開発地域の地熱構造モデルを作成するために必要不可欠な情報(地質構造、熱源位置、キャップロックや貯留層位置、地熱流体の性状、地下温度等)を得ることができます。
    地熱井は多大な費用と昼夜を問わない労力によって掘削されます。加えて、地熱井は、我々が地下深部の真実の姿を垣間見ることのできる唯一の手段です。その意味でもコア・カッティングス解析は、地熱調査において重要な作業の一つであると言えます。
    一方、地熱井が成功、もしくは所期の目標を達成することができず不成功であったとしても、地質試料の解析データと地表探査結果や既存坑井データと比較・検討し、その地熱井がなぜ成功したか、なぜ失敗したかを総合的に解析することは、地熱開発を進めていく上で欠かせない作業です。
    弊社ではどのようにすればコア・カッティングス試料から地下の情報を余すことなく読み取ることができるかをテーマに、測定・分析手法の改良や解析方法の研究開発を行ってきました。また、それらの技術をいかに実際の地熱開発に活用するかについても経験を積み重ねてきました。現在、弊社では以下に示す8種類の手法を用いて、コア・カッティングス解析を行い、そのデータと地表探査結果や既存坑井データを合わせて、開発地域の地熱構造モデルを構築しています(図5解析フロー図参照)。このホ−ムページでは、それぞれのコア・カッティングス解析手法の概要と、弊社の技術開発への取り組みについて説明します。

    図1 地熱井掘削写真
    図2 トリコンビットによる
    掘削想像図
    (カッティングス採取)
    図3 コア試料写真
    図4 カッティングス試料写真
    図5 コア・カッティングス解析から
    地熱構造モデル更新までの作業フロー
    • 肉眼観察・岩石薄片観察
    • X線分析及び解析
    • 流体包有物測定及び解析
    • コア断裂系解析
    • ジルコンの測定及び解析
    • 年代測定及び解析
    • 岩石物性値測定及び解析
    1.肉眼観察・岩石薄片観

    コア・カッティングス解析は、地熱井の掘削により採取された地質試料を肉眼、ルーペあるいは実体顕微鏡によって観察・記載することから始まります。主な観察項目は、岩石の種類・色調・硬さ、割れ目の特徴や充填鉱物(コアのみ)、変質の程度・性状等です。さらに岩石の種類を確定したり、変質の状況を確認するために岩石薄片を作成し、偏光顕微鏡を用いて岩石記載を行います。これらの観察結果は、地質柱状図(図1-1)にまとめ、地熱井周辺の地質、変質状況及び層序 (図1-2)を明らかにします。 弊社では地熱井の地層区分を必要以上に細分化しないようにしています。すなわち地層区分を岩石種や年代によって明確に区別できる最小の数にとどめ、地層の境界深度を正確に把握することに重点を置いています。このことにより地熱井間の地層境界を比較し、その間に存在する断層(図1-3)の推定することが、より確度の高いものになります。

    図1 地熱井掘削写真
    図1-2 大岳・八丁原地区摸式層序
    図1-3 八丁原地区地質断図面
    2.X線分析及び解析

    岩石が地熱流体(熱水・ガス)と接触すると個々の造岩鉱物と地熱流体との間で化学反応が起こり、各鉱物は地熱流体の温度・圧力・化学成分に応じて別の鉱物(変質鉱物)に変化します。そこでコア・カッティングス中の変質鉱物をX線分析(図2-1)によって同定することにより、変質作用にかかわった地熱流体の温度やpHが推定できます。さらに、これらの変質鉱物を一定の基準(表2-1)で区分し、同一の変質区分の広がりからキャプロックや熱水貯留層の位置及び規模を推定します(図2-2)。
    弊社は変質鉱物の量的な表示に石英指数(表2-1、林、1979)を使用しています。石英指数は半定量的に変質鉱物の生成量が把握でき、深度毎の変質強度の変化や、熱水通路が存在する可能性の高い脈鉱物が多量に存在する深度の判定に役立ちます。
    弊また、弊社は国内外における多くの地熱地帯の調査・開発経験から、変質鉱物の持つ情報を地熱構造モデルに十分かつ有効に活用できる技術力を有しています。

    図2-1 X線回析チャート
    (測定鉱物:緑泥石)
    表2-1 大岳−八丁原地熱帯に
    おける変質タイプの区分基準
    及び石英指数
    図2-2 八丁原地域の変質帯分布図
    3.流体包有物測定及び解析

    地熱開発において、地下温度を正確に把握することは、不可欠な作業の一つです。地下温度を知るためには、サーミスター温度計を用いた温度検層を始めとしていくつかの方法がありますが、流体包有物(図3-1)を使った温度計(図3-2)は、次のような利点を有しています。

    • 地熱井掘削中でもコアやカッティングスが採取されていれば地下温度が推定できます。
    • 貯留層とつながった大規模な逸水ヵ所では、多量の掘削泥水が流入している為、地熱井周辺の冷却がすすみ、温度検層や温度回復試験では、真の地下温度すなわち貯留層温度を知ることは困難です。逸水層の近傍あるいは逸水層の区間でスポットコア、カッティングス等の坑井地質試料が採取されれば、流体包有物温度計により精度の高い貯留層温度の推定が可能です(図3-3)。
    • 温度検層を実施しなかった生産井や還元井でも、コアやカッティングスが採取・保存されていれば、その地点の地下温度が推定できます。
    • 地下温度の推定だけでなく、均質化温度の分布から地熱流体の相状態が推定できます(図3-4)。

    流体包有物の測定は、弊社が新エネルギー・産業技術総合開発機構(以降、NEDOと省略する)と共に研究開発を進めてきたコア・カッティングス解析手法の一つです。前述した1)顕微鏡下加熱装置を用いた流体包有物均質化温度測定(流体包有物温度計)の他に、2)顕微鏡下冷却装置を用いた氷融点測定(熱水中の塩濃度推定)、3)レーザーラマン分光分析装置を用いた流体包有物中のガス組成分析等(図3-5)もテーマとして取り組んでいます。さらに、測定精度の向上及び測定結果の地熱モデルへの適用技術の開発に努めています。

    図3-1 流体包有物の分類
    図3-2 流体包有物均質化
    温度測定原理図
    図3-3 流体包有物均質化
    温度測定原理図
    図3-4 八丁原地熱帯貯留層に
    おける流体包有物均質化温度
    分布の特徴
    図3-5 包有物測定装置
    河川構造物の健全度診断及び対策工設計(補修設計)

     河川構造物のコンクリートの劣化状況、ひび割れ状況等について詳細に調査し、施設の健全度評価を行うとともに、施設の補修・補強設計を行います。

    4.コア断裂系解析

    コア中に認められる断裂(図4-1)の走向・傾斜を求めることは、開発地域の地質構造を推定し、地熱流体の通路を探る上で重要な手法です(図4-2)。しかし断裂の傾斜は、容易に測定できますが、走向はコアの方位が定まらないため、測定することができません。そのため、走向・傾斜を考慮したコア断裂系解析は、ほとんど実施されていません。最近では定方位コアの採取技術も開発されていますが、費用が高いため、なかなか採用できないのが現状です。
    そこで弊社では、NEDOと共同で岩石中の自然残留磁気を利用してコアの方位を定め、断裂の走向・傾斜を測定・解析するシステムを研究開発しました(図4-3)。
    本手法は、地熱開発において、主要な熱水貯留層となっている断裂の走向・傾斜を推定するのに役立っています(図4-4)。オールコアが採取されている地熱井では、貯留層の位置や広がりを把握する上で有効な解析手法と考えられます。

    図4-1 コア中の断裂写真
    図4-2 地熱井と断層(断裂)の
    関係摸式図
    図4-3 コア断裂系解析フロー図
    図4-4 コア断裂系解析例
    5.ジルコンの測定及び解析

    地熱開発において、ジルコンの測定及び解析は、以下の目的のために使用されます。
    (A) 地層区分
    地熱地帯で採取されたコアやカティングスは、強い熱水質を受けているために、原岩を確認することが困難な場合があります。ジルコン(ZrSiO4、図5-1)は、各種の火成岩や変成岩に一般的な副成分鉱物として普遍的に含まれており、また堆積岩類の主要な重鉱物の一つでもあります。さらに、ジルコンは化学的に安定であるため変質岩中にも残存しており、また、結晶形や含有量が、含まれる母岩の岩型によって様々に変化します。したがって、ジルコンの結晶形を体系的に分類したり、含有量を測定することにより、地層区分や岩型区分に役立てることができます。
    弊社では、この手法の提唱者である九州産業大学 林正雄教授の指導のもと、ジルコン結晶形の解析手法(図5-2)を実際の地熱井に適用し、開発地域内に小規模な陥没帯を見出しました(図5-3)。この陥没構造は、精密重力探査結果よっても支持され、さらに、陥没構造形成している断層周辺に、熱水貯留層の存在も確認されています。
    (B) 年代測定
    以上のように、ジルコンについては結晶形のみならず、FT及びTL年代測定結果などを含めて総合的に解析することにより、地熱系の地質構造や地熱構造を明らかにすることができると考えられます。

    図5-1 ジルコンの結晶
    図5-2 ジルコン結晶形
    図5-3 ジルコンの解析適用例(K-11号井)
    6.年代測定及び解析

    地熱開発において、年代測定(図6-1)は以下のような目的のために実施されます。
    (A)熱源位置の推定
    火成岩の年代をK-Ar法あるいはフィション・トラック(FT)法,熱蛍光(TL)法等を用いて測定し、その年代値からその地熱帯の熱源となっている火成岩体の位置を推定します。
    (B)地熱活動域の変遷の推定
    熱蛍光(TL)法を用いて変質岩の年代値を求め、開発対象地域において最も地熱活動の活発な地域がどのように移動していったのか解析します。
    (C)地質層序の確立
    地熱井の地層区分を行った後、各地層毎に代表する岩石の年代値を測定し、地表地質試料の年代値や岩相と比較することにより、坑井地質層序を確立します。
    前述したA)のK-Ar法やフィション・トラック法はほぼ完成された技術といえます。開発地域の中で生産井のターゲットとなる地熱活動の活発な地域を選定していくためには、迅速でかつ精度の高い変質岩年代測定手法が必要です。そこで弊社は、NEDOと共同で、石英やジルコンを用いたTL年代測定法の研究開発を行い、実用化することができました。

    図6-1 年代測定法比較図
    7.岩石物性値測定及び解析

    コア試料を用いて岩石の物性値を測定し、地層の物理的な特性を把握するための参考データとします。地熱開発調査に関係した岩石の物性値としては、A) 密度、B) 空隙率、C) 浸透率、D) 弾性波速度、E) 比抵抗、F) 比熱、G) 熱伝導率、H) 帯磁率等があります。 弊社では、物性値測定結果を次の目的に使用しています。

    A) 密度・・・重力探査結果の解析、貯留層シミュレーション用数値モデルの作成

    B) 空隙率・・・貯留層シミュレーション用数値モデルの作成

    C) 浸透率・・・貯留層シミュレーション用数値モデルの作成

    E) 比抵抗・・・電磁探査結果の解析

    F) 比熱・・・貯留層シミュレーション用数値モデルの作成

    G) 熱伝導率・・・貯留層シミュレーション用数値モデルの作成

    さらに、物性値と地質柱状図や各種検層結果との対比、あるいは物性値の相関から各地層の物理的な特性を把握しています。

物理探査

  • 重力モニタリング
  • 電磁法(MT及びCSAMT法)探査
  • 鉱体流電電位法探査(MAM)
  • 注水中の坑井内検層
    (逸水位置確認検層)
  • 物理特性に基づく地下構造モデル
    (2次元,3次元)

地化学調査

  • 2次元モデルによる
    地下の密度変化解析
  • 土壌及び土壌ガス探査
    (水銀、二酸化炭素、13Cなど)
  • 地表及び地熱井からの
    流体サンプリング
    (化学・同位体分析を含む)
  • 地熱流体の起源、温度、化学特性、
    流体挙動を明らかにするための
    地化学解析
  • 地熱流体の混合、
    流動を説明できる地化学モデル
    (流体流動モデル)の作成
  • 地熱流体の化学特性に基づく
    スケール付着予測及び腐食予測